税務ひと口メモ vol.3

  簿記・会計・税務について、わかりやすくお話します。
  前回迄で法人税の基礎的な事は終わりにして、今回からは少し趣向を変え、
  その時々のタイムリーな税法、会計について書いて行きたいと思います。
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所得税確定申告                              2004・2・1

今回は今年の所得税確定申告についてです。
税法は政策的見地から、時々今までの考え方、立法趣旨を根底からひっくり返すような
改定が行われる事があります。そのような改定は特に気をつけて書きたいと思います。
1.上場株式等に係る譲渡損失の繰越控除
 株式等に係る譲渡所得等の金額の計算上生じた損失の金額は生じなかったものとみなす (株式等譲渡益課税の原則)・・・今までの考え方であり、この条文はまだ生きています。
2.上記にかかわらず、平成15年1月1日以後に「上場株式等」の「一定の譲渡」をした事に
 より生じた損失で控除出来なかった損失の金額は3年間の繰越控除が認められる事とな
 りました。
3.控除、繰越控除が出来るのはその年度の株式等に係る譲渡所得の金額が限度とされ
 ます。
4.上場株式等とは、上場株式、上場新株予約(引受)権、上場転換社債、カントリーファン
 ド、店頭登録株式、日銀出資証券、等々です。
5.一定の譲渡とは、通常は証券会社を通じて行う売却です。
6.この特例の適用を受ける為には、その譲渡損失の明細書その他一定の書類の添付。
 その後連続して確定申告書の提出をすること。繰越控除をする場合の明細書の添付。
 等が必要となります。

消費税が変わります                           2004・3・1

消費税法の一部が改正され、その施行期日が迫ってきました。その概略を記します。
なお、下記@〜Cについては、平成16年4月1日以降開始する課税期間(通常は事業年度。
個人の場合は平成17年1月1日から)から適用され、
Dについては平成16年4月1日から適用になります。
@事業者免税点が、3000万円から1000万円に引き下げられます。
A簡易課税制度の適用上限が、2億円から5000万円に引き下げられます。
B課税期間の特例が改正されます。>>>新たに、1ヶ月を課税期間とする事が出来る特例
が設けられます。つまり、毎月納付しても構わないという規定。逆に言えば毎月還付申告が
出来る規定が設けられました。
C一定の場合に中間申告、納付回数が改正されます。>>>前課税期間の確定消費税額
が、4800万円(地方消費税を含めた金額では6000万円)を超える場合には、年11回の中間
申告、納税が義務づけられます。(>>毎月納付になります)
D総額表示が義務付けられます。>>>消費者に対してあらかじめ価格を提示する場合
(平たく言えば値札には)その総額を表示する事が義務づけられます。
消費税は、確実に税負担が増加する税金です。しっかり対策を立てましょう。
                        

プライバシーマークの費用について                   2004・4・1      

プライバシーマークをご存知ですか?
情報産業が拡大するに伴い、個人情報の流出が社会的な問題となっていますが、なかなか
きちっとした法整備が出来ないようです。そこで個人情報の取り扱いを適切に行っているとい
うイメージや安心感を与えるといった狙いから、プライバシーマーク制度が注目を浴びていま
す。
この制度は、財団法人日本情報処理開発協会が通商産業省の個人情報保護ガイドラインに
準拠して個人情報の取り扱いを適切に行っている民間事業者に対してプライバシーマークの
使用を認め、適切な体制を整備している民間事業者等を広く一般に知らせる制度です。
この制度は平成10年4月より運用が開始されており、現在の認定事業者は700社を越えてい
ます。(ネットで検索するとかなりの大手事業者の名前が並んでいます。)
さてこの認定を受ける為には申請、審査、認定となるわけですが、当然、申請手数料、現地
調査料、マーク使用料といった費用が発生します。事業規模によって15万から60万円
の手数料がかかります。(マーク使用料は2年毎に発生します)
これらの費用については、前払費用、繰延資産等の処理が考えられますが、税務上の取り
扱いは原則としてISO規格の認定登録の手数料と同様にその年度の経費として問題はない
ようです。
               

消費税の総額表示と印紙税の取り扱い  2004・5・1

今年4月から消費者に対する価格を提示する場合には、その総額を表示する事が義務付けられました。
また、免税点が1000万円に引き下げられ、課税事業者が大幅に増える事となります。
そこで、消費税と印紙税について整理をしておきたいと思います。
印紙税は課税文書に記載された金額により課税されます。(但し、一定の文書には記載金額のない場合にも課税はされます。)
例えば、領収書を発行する場合。領収金額30,450円とだけ記載すれば、印紙税がかかりますが。領収金額30,450円(税抜き価格29,000円)あるいは領収金額30,450円(うち消費税額等1,450円)など、その文書上で消費税額が明らかである場合は、その消費税等の金額を記載金額に含めないこととされています。つまり税抜きの価格で印紙税を計算すればよいのです。
但し、領収金額OOOO円(消費税等を含む)、領収金額OOOO円(消費税等5%を含む)
といった記載方法は具体的に消費税等が明示されていないので、税込みの金額で印紙税が判定されますのでこのような表現はやめるべきです。
例示した他にも色々な記載方法があると思いますが、疑問の点はどんどんご質問ください。

源泉徴収なんでだろう?                       2004・6・1

個人の所得税は、納税者自身が申告、納税するのであるが、給与に代表される一定の所得については、支払い者が支払いの際に税金を徴収して納付する源泉徴収制度が採用されています。税理士への支払いについても源泉徴収が規定されていますが、所得税法上、「行政書士」に支払われる報酬等は、源泉徴収しなければならないと規定されていません。
個人に支払う報酬・料金等については、原稿料、講演料、技芸・スポーツ・知識等の教授・
指導料、税理士報酬、外交員報酬、出演料、ホステスの報酬などの支払者がその支払の際
所得税を源泉徴収することが義務付けられています。
いわゆる「士業」に対するものとして、税理士・弁護士・司法書士・土地家屋調査士・公認会計士・社会保険労務士・不動産鑑定士等がありますが、「行政書士」は規定されていません。つまり「行政書士」に対する報酬の支払については源泉徴収の義務はありません。
なお、税理士・弁護士・社会保険労務士などについては「支払金額*10%」(100万円を超える場合には、超える部分については20%)、司法書士・土地家屋調査士などは「(支払金額−1万円)*10%」が源泉税額となります。
また、源泉徴収を怠った場合には、その支払額を手取りの金額として源泉税額を計算し、その支払者に納税の義務が課されます。遺漏のないようにしなくてはいけません。


欠損金の繰越控除と国税通則法の改正              2004・7・1

青色申告を提出する法人が、ある事業年度において赤字(欠損金額)になった場合、連続して申告書を提出している限りは、その欠損金額はその後5年以内の事業年度の所得から控除する事が出来ます。つまり5年間で赤字を無税で取り戻すチャンスが与えられているわけです。
しかし近年の不況や、バブル期に購入した不動産の処分を金融機関から迫られ、多額の
売却損を計上しなければならなくなった企業にとっては、5年間でその赤字を取り戻す事が困難な状況が考えられます。そこで一時期に多額の欠損金額が発生するものの、将来の企業活動の活性化につながる事業の再構築等に取り組む企業を支援することを趣旨としてその期間が7年に延長されました。
この改正は平成13年4月1日以後に開始した事業年度において生じた欠損金について適用されます。
これに伴い@帳簿書類の保存期間が5年から7年に延長されました。
またA従来は3年とされていた「増額更正の期間制限」について、国の債権債務の消滅時効が5年である事や減額更正とのバランスを踏まえ5年に延長されました。但し所謂、脱税の場合は7年のまま変わりがありません。
今後は通常の調査でも5年さかのぼって修正申告と納税が求められる事になります。
正しく飴と鞭ですが、いずれにしても間違いのない申告をしなければいけません。

アルバイトの源泉徴収 2004・8・2

事業者が給与を支払う場合にはその支払者に源泉徴収義務がありますが、通常の月給な
ら、扶養控除等申告書が提出されていれば甲欄、その他は乙欄を適用し税額が決まります
が、パートタイマーやアルバイトといった給与所得者に対する源泉税は雇用形態、給与計算
基準、支払方法等により取り扱いが異なります。まとめてみると、以下のようになります。
T.月額表の甲欄または乙欄を適用する給与
@月ごとに支払うもの。A半月ごと、旬ごとに支払うもの。B月の整数倍で支払うもの。
U.日額表の甲欄または乙欄を適用する給与(下記Vに該当するものを除きます)
@ 毎日支払うもの。A週ごとに支払うもの。B日割りで支払うもの。
V.日額表の丙欄を適用する給与(扶養控除申告書の必要なし)
@労働した日または時間によって算定される給与で、労働した日毎に支払われるもの。
A日々雇い入れられる者の労働した日または時間により算出される給与で労働した日以外
において支払われるもの。
B雇用契約期間が2ヶ月以内の者に支払われる給与で、労働した日または時間によって算
定されるもの。
但し、同一の雇用主のもとに継続して2ヶ月を超えて雇われることとなるときは、
その2ヶ月を超える部分については、甲欄または乙欄が適用されます。
似たような表現が多いのですが、不明な点はご質問ください。
                 

リビング・ニーズ特約の保険金    2004.9.6

リビング・ニーズ特約って知っていますか?
通常なら、被保険者が亡くなった場合に死亡保険金が支払われますが、現在契約している保険に「リビング・ニーズ特約」を付け加えた場合、被保険者の余命が一定期間内(通常
6ヶ月以内)と医師に判断されたならば、支払われる予定の死亡保険金のうち、一定額
(通常3,000万円)を上限に保険金が「前払い」される仕組みとなります。
余命いくばくもない人が、人生最後の期間を快適に過ごせるよう配慮したシステムとなっています。
ところで、この前払いされる保険金について税金はどうなるのでしょうか。
とりあえず、税金はかからないというのが答えです。
一般的に、被保険者が死亡したことにより遺族が受け取る死亡保険金は、みなし相続財産として相続税の対象となります。しかしこの特約に基づいて被保険者が生前に受け取る保険金については、身体の障害や疾病等により支払われる保険金と考えられるため、所得税は非課税となります。勿論、まだ相続が発生していないので、相続税もかかりません。
例えば、死亡保険金1億円の契約の場合、この特約が付いていなければ、1億円がそのまま
相続財産となりますが、特約により、生前に3,000万円が支払われていれば、残りの7,000万円が相続財産となります。(但しその3,000万円が費消されていればの話ですが。)

約4兆円の電話加入権が消える?    2004.10.5

電話加入権は、固定電話を設置する際の施設設置負担金(昭和60年以降7万2千円)と
手数料との支出額をもって無形固定資産に計上されている資産です。
現在の市場価格は1万円程度であり、相続財産としても1万円(東京国税局管内)で評価しなければいけない財産とされています。
ところでこの程、総務大臣の諮問機関である情報通信審議会の答申案「平成17年度以降の接続料算定の在り方について」では、電話加入権の廃止も視野に入れて検討することが盛り込まれているのです。
仮に加入権制度が廃止された場合には、この負担金を要さずに電話役務の提供を受けられるようになる為、その資産性は失われる事となります。
現在の契約数は約6000万件、仮に一契約7万2千円とすると約4兆円の資産が消えることになってしまいます。
法人契約に限って検討すると、税務上非減価償却資産とされている電話加入権は、税法改正など税務当局の何らかの取り扱いが明確にされない限り、評価損の計上は出来ません。
会計上は減損等の適用方針がほぼ明確になっている事からしても、早く無税償却出来るようになって欲しいものですね。

被災地支援に係る法人税の取り扱い           2004.11.4

 地震、台風など今年は大変な一年になっていますが、被災した取引先などに災害見舞金
や一定の利益供与をした場合、法人税ではどのような取り扱いになっているのでしょうか。
通常の場合では、それらは寄付金あるいは交際費に該当し、損金算入額に限度がありま
す。
しかし先の阪神・淡路大震災の際に出された個別通達を整備して以下のような取り扱いと
なっています。
1、取引先に対する災害見舞金等
法人が被災した取引先に対し、一定の期間内に被災前の取引関係の維持と回復を目的と
して、災害見舞金の支出、事業用資産の提供をした場合などについては、交際費等に該当
しない事とされています。
2、売掛債権の免除等
  売掛債権の免除については、災害の発生から相当の期間内、つまり、被災した得意先
等の取引先が通常の営業活動を再開するまでの復旧過程にある期間内において行われ
るものである場合には、その売掛金等の免除による損失は寄付金等に該当しない事とされ
ています。売上値引き等としての処理が認められます。
3、低利または無利息による融資
被災した取引先に対するものでその融資が復旧支援を目的として、一定の期間に行われ
るものであれば経済的利益は無いものとして寄付金認定は行われない。
4、自社製品等の被災者に対する提供、募金団体への義援金ほか
  不特定多数の被災者のために緊急に行う自社製品等の提供に要する費用は、人道的
見地と社会的要請によって行われるものである事から寄付金に該当せず、広告宣伝費
に準ずるものとされます。

タンスの中身をチェックしよう         2004.12.3
 
 ハイテク技術を駆使した新札が発行され、うわさでは将来新札に交換しないと旧札が使え
なくなる?などという話もありますが、きちんとした法令で決めないとそうした事にはなりませ
ん。仮にそういう状況になるにしても、まだまだずっと先のことでしょう。
ところで株券については後5年で紙くずになってしまう、そんな場面もありうるのです。
「株式等の取引に係る決済の合理化を図るための社債等の振替に関する法律等の一部を
改正する法律」と言う長い名前の法律の公布によって、株券の電子化(不発行)が可能とな
りました。特に上場・公開株式については、平成21年6月までの一定の期間に
一斉、かつ、強制的に株券の無券面化(電子化)が行われる事となっています。
新制度のもとでは、株主の権利は金融機関の振替口座で電子的に管理されるようになりま
すが、既存の現物株券は移行日をもって無効となってしまうのです。
振替口座以外の株式であっても株主としての権利は株主名簿に名義が記載されていれば、
保全される事になりますが、タンス株の場合、名義書換を行っていないと、最悪の場合、株
主の権利を失ってしまいかねないので注意が必要です。
「株券の占有者は之を適法の所持者と推定する(商法205条A)」と言う規定が長い間商慣
行として定着してきましたが、時代はどんどん変化しています。知識の詰め替えも
迅速かつ正確にやって行かなくてはいけませんね。
                      

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