税務ひと口メモ vol.5

  簿記・会計・税務について、わかりやすくお話します。
  以下の記事は、顧問先様宛に毎月送付している「事務所便り」よりの引用です。
   7月号において「有限会社が無くなる?」のタイトルで少し「新・会社法」について述べました
  が、しばらくの間連載したいと思います。

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新・会社法について その1                           2005・9・1

新・会社法(以下「新法」と呼びます)は、本年6月29日成立し、7月26日公布されました。施
行期日は平成18年5月を目途とされています。
ではこの新法によってどのように会社が変わっていくのでしょうか。
まず、先日も述べたように制度上有限会社が無くなります。その代わり(と言うのではあり
ませんが)合同会社と言うものが出来ます。
つまり会社は、株式会社と合名会社、合資会社、合同会社(この3形態の会社を総称して
持分会社と言います)という組織が法定されることとなりました。
現在多くの会社が有限会社、株式会社であり、現在の有限会社は「特例有限会社」という
株式会社になる訳ですから、まず新法における株式会社を研究しましょう。
新法ではあらゆる面の改正がなされていますが、会社の機関(運営)という面から大別し
て、「大会社」とそれ以外の「中小会社」。「公開会社」とそれ以外の「株式譲渡制限会社」
に分類して規定しています。会社の規模や公開性に基づきそれぞれの権限と責任を細かく
定める事となったのです。
次回からは、具体的な問題を掲げながら勉強していきましょう。

会社法について その2                             2005.10.1

今月号からは新・会社法と呼ばずに単に会社法と言います。一般的にも会社法で理解され
ていますし、旧会社法なるものがある訳では無いのですから。
会社法は現行の商法第2編、有限会社法、商法の特例に関する法律等を再編し1つの法
典としたものです。そこでは新しい定義語が多く出てきています。
株式会社について、まず「大会社」ですが。@資本金が5億円以上、またはA負債総額が
200億円以上である会社を言います。そしてそれ以外の会社は定義としてはありませんが
「それ以外の会社(中小会社)」という事になります。
次に「公開会社」とは。@その発行する全部または一部の株式の内容として譲渡による当
該株式の取得について株式会社の承認を要する旨の定款の定めを設けていない株式会
社をいう。分かりやすくいうと誰にでも売れる株式を発行している会社と言う事になります。
したがって、所謂「株式譲渡制限会社」は、その発行する"すべての株式"について譲渡制
限規定のある会社であり、会社法上は「公開会社でない株式会社」と言う事になります。
一般の中小企業はその殆んどが株式譲渡制限を設けていますから、「大会社以外の公開
会社でない会社」と言う事になります。
次回からその運営形態をみてみましょう。

会社法について その3                          2005・11・1

会社法においては、その規模(大会社と中小会社)と株式の公開性(公開会社と公開会社
でない会社)という点から、つまるところ次の4つの会社形態が存在する事となります。
@公開会社である大会社 (所謂 上場会社、株式公開会社)
A株式譲渡制限会社である大会社 
B公開会社である中小会社
C株式譲渡制限会社である中小会社(多くの中小企業が該当する)
では具体的にどのような運営形態があるのでしょうか。
@の公開大会社は最も厳しい規律が求められます。認められる形態は次の2通りだけで
す。
イ.監査役会設置会社(取締役会+監査役会+会計監査人)
ロ.委員会設置会社(取締役会+三委員会+会計監査人)
A、Bの会社についてはここでは省略します。ハ.ニ.ホ.へ.の4項目が加わります。
さてCの会社については@〜Bの会社に認められる会社形態(いずれもCよりは厳しいも
のです)に加え、つぎの4形態が認められています。
  ト.取締役会+監査役(現状の形態です)
  チ.取締役会+会計参与
  リ.取締役+監査役
  ヌ.取締役のみ      
つまり最も簡素な形態として、取締役が一人だけの株式会社が認められる事になります。

会社法について その4                         2005・12・1

株式会社の設立についてはどのような見直しが行われたのでしょうか。
主な見直しは次の3点です。
@出資額規制の撤廃  
 従来の商法では、株式会社については1,000万円、有限会社については300万円の最低資本金制度がとられていました。(期限付きで当該金額を下回る資本金の会社設立が認められていましたが、一定期間内に1,000万円なり、300万円に引き上げる必要がありました。)
 しかし今度の会社法では資本金の規制はなくなりました。つまり、資本金が1円の株式会社が設立できる事になります。
A発起設立の場合における払込金保管証明制度の撤廃
従来は払込金について、金融機関が払込保管証明書を発行することにより設立の登記がされましたが、発起設立に限り銀行口座の残高証明書等の方法による事が出来る事となりました。
事務手続きの簡素化、費用の軽減が図れる事となりました。
B検査役の調査を要しない現物出資、財産引受けの範囲の拡大
500万円以下の現物出資、引受けについて簡便化が図られました。
以上 現金は持っていないが、営業に使える自動車やパソコンといった現物を出資に当てて起業しようとする人には、良い制度になりました。
                     

会社法について その5                        2006・1・1

株式会社が発行する株式についてはどのような見直しが行われたのでしょうか。
それは一言でいうなら、会社の経営のために(業績向上のために)様々な株式(種類株式)の発行が認められるようになると言う事です。
最近IT産業や何とかファンドの社長がマスコミをにぎわせ、企業買収や資本提携と言った事が問題となっていますが、それに対抗する手段として「黄金株」なる物の発行が是か非かといった問題に発展しています
これまでも、普通株式のほかにも配当優先株などといった株式はありましたが、これからはもっと色々な株式の発行が行われる事になるでしょう。
例えば今まで中小会社の専売だったような「譲渡制限株」も「取得請求権付株」として大会社でも発行されるかもしれません。
つまり会社が株式を発行する際「この株式についてはこのような権利及び権利の制限が在りますよ」との条件付で発行される事になります。
それでは株主間の平等が損なわれるのではないかとの考えがありますが、そうではなく新会社法においては異なる内容の種類株式については異なる取扱が出来ることを明確化し、同じ内容の株式については株式数に応じて平等に取り扱うべき事を明文化しています。

会社法について その6(最終回)                    2006・2・1

会社法についてはまだまだ改正点がありますが、これからの会社運営において、実務上重要と思われる点について書きたいと思います。

1.有限会社から株式会社への変更
今までの有限会社は「特例有限会社」としてそのまま存続できますが、法律上は
「株式会社」です。所謂「整備法」で経過規定が定められていますが、将来にわたってそのままで良いのかは各社で判断すべきでしょう。もし事業の承継などを考えているのでしたら、この際真正の「株式会社」に変更してはどうでしょうか。
その場合@商号の変更 ○○有限会社 から ○○株式会社、その登記。
      A取締役の任期の決定
この場合資本金については、最低資本金制度が廃止されたのであえて増資する必要はありません。

2.従来の株式会社について
上記と関連しますが、「株式譲渡制限会社」については、取締役、監査役の任期が10年以内とすることが出来るようになりました。
定款の変更が必要ですが、現在取締役2年、監査役4年の法定された任期を考え直しても良いのではないでしょうか。
                  

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